ソファでの夫婦の夜
ソファに並んで座り、翔子はクッションを抱きながらゆっくりと脚を組み替えた。
テレビの画面は流れ続けていたが、誰も見ていない。
「……ちょっと、すごかったね。昨日の」
そう言ったのは翔子。ぽつりと漏らすような口調だった。
「うん」
秀斗はグラスを傾けながら、翔子の横顔を見た。
「カメラ越しのあの目線……あれは反則だって」
「ふふ。見えてたんだ」
「しっかり見えてたよ。……ずっと、こっち見てたろ?」
翔子は目を細めて笑い、クッションに頬を軽く寄せた。
「だって……そのつもりでしてたし」
秀斗は小さく息を吐いたあと、視線を床に落とした。
「正直……あんなふうに浴びるとは思ってなかった」
「うん。私も、ちょっとビックリした。髪にもかかっちゃって……」
「でも、最後のキス。あれが……たまらなかった」
翔子は、少しだけ視線を外した。
「……なんとなく、してあげたくなったの」
しばらく沈黙が続く。
ワイングラスを置いた秀斗が、ぽつりとつぶやく。
「次は……もう少し踏み込んでみようか」
「どういう感じで?」
「たとえば……隣に座って。今度はキスの代わりに、耳元で囁くとかさ。
それから……少しだけ、触らせてみる。胸とか」
翔子は目を細めて笑った。
「やっぱり、そっちいくんだ?」
「そっちいくよ。……でもさ、翔子が嫌じゃなければ、ね」
「うん。大丈夫。そろそろ……いいかなって思ってた」
「じゃあ、ChatGPTに聞いてみようか?」
翔子が首をかしげる。
「ChatGPTって……AIでしょ? 将棋とか計算とかには強いんでしょ。そういうエロいのも、平気なの?」
秀斗がニヤッとしてスマホを手に取る。
「余裕で対応してくれるよ。今どきのAIは万能だからな」
そう言いながら、画面に文字を打ち込んでいく。
「“前回、大地が翔子に顔射し、翔子が亀頭にキスした。その続きを自然に発展させる演出は?”……っと」
翔子が吹き出す。
「ちょっと、それ書く? ていうか、顔にかかったのは――あれ、大地くんのが飛びすぎただけだからね。トラブル、トラブル」
少しして、画面に提案が表示される。翔子は興味津々で覗き込んだ。
ChatGPTの提案:次なるプレイの導線
「次は、“触れさせたまま”感じさせてみるのはどうでしょう?」
例えば――翔子が自宅のリビングでソファに座り、大地を隣に座らせます。
彼の手を、自分の太ももへとゆっくり導き、「ね、大丈夫。……ちゃんと見てて」と囁く。
カメラが回っていることをさりげなく意識させながら、
翔子はスカートの裾を少しだけずらして脚を組み替え、クロッチ越しにヒップラインを見せる。
「前みたいに……いっぱい出ちゃうかな?」
そう言いながら、今度は頬や首筋に唇を近づけ、
目を逸らせない距離で視線を絡めていく。
射精には至らせず、「今日はここまで」とキス一つで終える――
この“寸止めとご褒美のバランス”が、彼の妄想をより深く刺激します。
翔子は吹き出しそうになりながら、画面を指差した。
「……ちょっと、ChatGPTエロくない?」
秀斗も笑う。「だよな、もはや人間超えてる」
「寸止めとご褒美って……うん、嫌いじゃないかも」
翔子はグラスを手に取り、ほんの少し口をつけたあと、静かに言った。
「やってみる。大地くん、ちゃんと耐えられるかな……?」
ケーキ屋での昼下がり
ショーケース越しに客足を見送ったあと、翔子はふっと息をついた。
店内に流れる音楽だけが、穏やかに空気を満たしていた。
奥のキッチンから戻ってきた大地が、軽くお辞儀をして言う。
「今の団体、めちゃくちゃ買っていきましたね……」
「うん。ありがとう、大地くん。よく回してくれたね」
翔子はやわらかな声でそう言いながら、髪を耳にかけて軽く微笑んだ。
制服の上からでも分かるスリムな身体のライン。
少し前かがみになるたび、胸元のふくらみや首筋が自然に目に入る。
光の加減で揺れる髪と、どこか無防備な横顔。
思わず目を奪われた大地は、瞬きを忘れてしまう。
「そろそろ、休憩入っていいよ」
「あ、ありがとうございます」
制服のまま、壁際の椅子に腰を下ろすと、大地は水をひとくち飲んだ。
翔子はその様子を横目に見ながら、少しだけいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「ねえ、大地くん。……この前の、撮影のことだけど」
彼はコップを持つ手を止めて、顔を少しだけ赤らめた。
「……はい」
翔子は目を細めて、小さな声で続ける。
「ちょっと楽しかった、私」
大地は一瞬、言葉に詰まったあと、こくんと頷く。
「……俺も、すごく……」
「ね、また……ああいうの、してもいいよ?」
一拍置いて、翔子は視線を合わせたまま、ほんの少しだけ、口元を緩めた。
その微笑みには、余裕と秘密がほんのりとにじんでいた。
(ふふ……次は、ちょっと意地悪かも)
そんなことを心の中でつぶやきながら、
翔子はレジ横のボードを手に取り、何事もなかったように業務へと戻っていった。
優しい導きと初めての触れ合い
リビングのソファに並んで座る二人。大地はカメラを三脚にセットし、録画ボタンを押した後、どこかぎこちなく手を膝に置いたまま、息を呑んで翔子を見ていた。
「緊張してるの? ……そんな顔してる」
翔子はそう言いながら、そっとワンピースの前を摘まんだ。リボンを解くように、ゆるやかにボタンをひとつ、またひとつと外していく。その動作すら、どこか日常の延長のようで、いやらしさよりも、柔らかな親密さが漂っていた。
「……ほら、見て」
最後のボタンを外すと、レースのブラがあらわになり、その上から、翔子はゆっくりとカップを下ろしていく。ぷるんと揺れた肌が、リビングの淡い照明に照らされて、まるで陶器のように滑らかに浮かび上がる。
「触ってみる?……ううん、舐めてもいいよ」
声は穏やかで、決して命令的ではなかった。許すように、導くように――翔子は自分の手で大地の頭をそっと抱き寄せた。
大地の唇が、ためらいがちに翔子の乳首に触れた瞬間。翔子の身体がかすかに震えた。
「んっ……」
抑えた吐息が、喉の奥で転がるように漏れる。甘く、そして艶を含んだ音。
「……そのまま、やさしくね」
片手はまだ大地の髪に添えたまま、もう一方の手は自分の膝に置かれたまま。翔子の表情は、どこか遠くを見つめるようにうっとりとしながら、しかししっかりとカメラの存在を意識していた。
「上手……だよ。……がんばってるね」
乳首を舌で転がされるたびに、わずかに肩が震え、呼吸が浅くなっていく。だが決して喘ぎ声を漏らしたりはしない。そこにあるのは、“快楽に染まりきらない余裕”と、“導く側のリズム”。
翔子の唇が、かすかに開いたまま、熱を帯びた息だけがこぼれる。
「……ふふ、大地くん。そんなに緊張してたら、続き……できなくなっちゃうよ?」
その声に込められたやさしい挑発は、大地の鼓動をさらに早めていた――。
乳首から口を離した大地の顔を、翔子はそっと覗き込んだ。彼の頬は赤く染まり、濡れた唇がわずかに開いたまま、浅い呼吸が続いていた。
「……ね、大地くん」
翔子は自分の手を、静かに大地の手の上に重ねた。そのまま何も言わずに、手をすべらせるようにして、自分の太ももへと導いた。
「こっち……触ってみる?」
小さく囁いた声には、甘さと照れの入り混じったような柔らかさがあった。ワンピースの裾がすこしめくれ、素肌があらわになる。
大地の指先が、そっと太ももに触れた瞬間、翔子の喉からかすかな吐息が漏れた。
「……ん、だいじょうぶ。ゆっくりでいいよ」
その言葉とともに、翔子は自ら脚を組み替えた。その動きに合わせてスカートが持ち上がり、レースのクロッチが、白い肌の間にぴたりと挟まって見えた。
「もう少し……上も、触ってみる?」
促す声は、ごく静かに、大地の耳元で囁くように響いた。
我慢と誘惑、そして決意
彼の手が、ゆっくりとクロッチの上に辿り着く。すでに、わずかに湿り気を帯びていた布越しに、温もりが伝わった。
翔子は目を閉じ、喉を鳴らすようにして小さく吐息をもらした。
「……ん、そう……そこ……」
声は抑えていても、身体は確かに反応していた。ほんの指の動きひとつで、太ももがわずかに震え、脚の奥がかすかにきゅっと引き締まる。
「……ちょっと、感じちゃうね」
唇に笑みを浮かべながらも、視線はまっすぐに大地の目を見つめていた。
その視線には、何よりも“許している”という確かな信頼と、“でも、まだここまで”という境界線が、淡くにじんでいた。
クロッチ越しの愛撫が一段落し、翔子はふと、大地の股間へ視線を落とした。はっきりとズボンを持ち上げるその膨らみ。生地の上からでも、熱と形が伝わってくる。
「……ん、見せて」
ささやくように言って、翔子はそっと手を伸ばす。ズボンの上から、指先で軽くなぞる。まずは縦に。ゆっくりと竿の形をたどるように。
「……うん、すごく固い」
唇に微笑みを浮かべたまま、今度は手のひら全体を使って、やさしく包み込む。そのまま、生地越しに撫でていく。ときおり親指の腹で、先端の位置を確かめるように円を描きながら。
「びくびくしてる……我慢してるんだね」
声音は甘く、労わるように。けれど指は、容赦なく感じる箇所だけを撫で続ける。
「……ここ、好きなんだ?」
翔子はくすっと小さく笑うと、そっと撫でる手を止める。
「……もう、止めとこうか。今日は、ちょっとだけって約束だったもんね」
そう言って手を引きながら、すぐには離れず、名残惜しげに布の上から指先をゆっくり這わせる。最後に、先端あたりを一撫ですると、ようやく手を離した。
「……我慢できたんだ。ちゃんとえらいよ」
翔子の声は柔らかくて、どこか誇らしげだった。けれどその目の奥には、まだ終わっていない熱が、静かに灯っていた。
空気が一度、静かに落ち着いた。けれど、肌の熱も、胸の高鳴りも、まだ終わってはいなかった。
翔子はスカートの裾を整えながら、深く座り直す。脚を組み替える動作とともに、レースのクロッチが一瞬、視線の隙間に覗いた。
大地の目がそちらへ吸い寄せられたのを、翔子は見逃さなかった。
「……まだ収まってないでしょ?」
いたずらっぽく微笑むその声に、大地は一気に顔を赤らめ、目を逸らした。
「……あ、すみません……つい、見ちゃって……」
「ふふ、見ていいよ。……だって、見せてるんだもん」
翔子はさらりと返しながら、視線を落として脚を軽く揺らす。太ももとレースが擦れる、ささやかな摩擦音が空気を震わせた。
少し間を置いて、ふと視線を戻す。
「……そういえば、この前……ちょっと顔に、かかっちゃったよね?」
大地の肩がぴくりと揺れる。
「……すみません。ほんとに、あの……勝手に出ちゃって……」
視線を落とし、気まずそうに額を手で拭うような仕草。
翔子は、それを見てふっと笑った。
「そんなに謝ることじゃないよ。あれ、私もちょっと油断してただけだし」
言葉は軽く、声はやさしく。けれど、心の奥にまで届くような柔らかさがあった。
「……でも、うん。ちゃんと見えてたよ。あのときの、大地くんの顔」
その“見ていた”という言葉には、ただの記録以上の意味が込められていた。翔子の瞳が、大地の中に残っている熱を、もう一度静かに灯していく。
翔子はそっと、大地の膝の上に手を置く。
「……やっぱり、出しちゃおうか?」
声はごく低く、やさしく、あくまで“相談”のように問いかけられた。命令ではない。誘導でもない。けれど断る選択肢を、甘く包み込んでしまう響きだった。
大地の喉がつっと鳴る。目が泳ぎ、ゆっくりと小さくうなずく。
翔子は、もう片方の手をそっと添えて、彼の膝を撫でた。
「……ね、大地くん」
その距離で、唇が触れるか触れないか――声は息に近く、肌に直接降りるような響きで。
「……どこに、出したい?」
すべてを受け止めるということ
囁くように聞かれても、大地は答えられなかった。唇がかすかに開いたまま、声が出ない。
翔子はしばらくその沈黙を待ち、そしてふっと目を細めた。
「……言えないの? 恥ずかしい?」
その声に責めるような調子はなく、むしろやさしさだけが漂っていた。
翔子は膝の上に手を置き、問いを続ける。
「手?……それとも、太もも?」
わざと少しずつトーンを下げ、「おしり……なんてのも、ありかな?」と、少しだけ囁きに近づける。
大地はそのたびに、喉を鳴らし、首をすくめるように身を小さくしていく。顔が赤くなり、視線が彷徨う。
翔子はその様子を見つめながら、しばらく間を置いた。そして、ごく自然な声で言った。
「じゃあ……顔で、いいよ?」
その言葉に、大地の目が見開かれる。
「えっ……あ、あの、それって……」
うろたえたように言葉が崩れる。翔子はその動揺を受け止めるように、にっこりと微笑んだ。
「うん、いいの。……前、ちょっとかかっちゃった時、秀斗がすごく喜んでたの。だから、ちゃんと……今回は最初から、そうしてあげたいなって思ってて」
声にはやさしい決意が滲んでいた。
「だから、大地くんががんばってくれたぶん……きれいに、気持ちよく終わらせてあげるね?」
そっと顔を近づけながら、目線はまっすぐ。けれど、その奥にあるのは、大地ではなく“カメラの向こうにいる夫”への愛だった。
翔子は、大地の前で静かに膝をついた。ソファに座る彼と目線を揃えるようにして、そっと息を吐く。
(……やっぱり少し恥ずかしい)
顔を差し出すという行為。それは女としてのプライドではなく、“妻としての愛”を形にするための行為だった。
(でも……あなたが、喜んでくれるなら)
翔子の目線は、一瞬だけカメラに流れる。その奥に“彼”――秀斗が見ている。
(……ちゃんと、綺麗に、受け止めたい)
その想いを胸に、ゆっくりと大地のズボンの前に手を添える。生地の上から硬さを確認しながら、指先で輪郭をなぞる。やがて、ボタンとジッパーをそっと開け、下着の奥から張り詰めたものを取り出した。
「……ふふ、やっぱり……相変わらず大きいね」
少し笑うような声色には、微かな照れと親しみ、そして“もう知ってる”という甘さが含まれていた。
翔子はそのまま、大地のペニスを両手でそっと包み込む。片手で根元を支え、もう一方で竿をやさしく撫で始める。指の腹で表面をなぞるたびに、ぴくりと跳ねる反応が伝わってくる。
「……ここ、好きでしょ?」
親指の腹で亀頭の縁をくるりと撫でると、大地の腰がわずかに浮く。
翔子はその動きに合わせ、先端から滲んだ透明な雫をすっと指先で拭い、ゆっくりと塗り広げた。
「ぬるぬるしてきたね。……気持ちよくなってきた?」
今度は手のひら全体で竿を包み、上下にゆっくりと擦りあげていく。摩擦音が濡れた吐息と混ざり、空気が艶やかに震え始める。
翔子の手首がしなやかに動き、裏筋を意識して、じっくりと擦る。反対の手は睾丸を包み、やさしく揉むように撫でながら――
「……もう少しだけ、焦らそうか?」
耳たぶすれすれに、囁くように言う。低く、甘く、芯のある声。その息が彼の皮膚を撫でただけで、身体が震えるのがわかる。翔子は、わずかに指を止めた。わざとらしく、でも自然に。彼の熱を包む掌が、ぴたりと静止する。
一瞬の沈黙。動かぬ手の中で、彼のそれがもどかしげに脈打っているのを感じる。
「ふふ……ねぇ、こんなに固くして……どうしてほしいの?」
にこりと微笑んで見上げる瞳には、慈しみと悪戯が混じっている。小首を傾げて彼の目を覗き込みながら、わずかに腰を寄せる。唇が触れるか触れないかの距離で、彼の先端にそっと吐息をかけた。わざと、ぬるく、ゆっくり。
「でも……うん、そろそろ。出してあげたいね」
そう呟いた直後、翔子の両手が再び動き出す。今度は迷いも緩慢さもない。むしろ、丁寧すぎるほどのゆっくりとした動きだった。
片方の手は根元をしっかりと支えたまま、もう一方の指先が、包み込むように亀頭をなぞる。ぷっくりと張った先端を、指の腹で軽く押し広げるように撫でながら、その表面をくるりと円を描いて撫で回す。時折、親指の先で尿道口をそっと押さえてから、ぬるりと滑らせる。
「ここ、ずっと我慢してたんだよね……熱くなってる」
唇の端に笑みを浮かべながら、掌で包んだまま、上下の刺激を再開する。ただし、そのストロークはとても短い。わざと亀頭のすぐ下で止め、そこだけを繰り返し擦り上げる。ときどき、きゅっと力を込めると、彼の身体がピクリと跳ねる。
「……うん、やっぱり、ここが好きなんだ」
その言葉と連動するように、翔子の口が近づく。舌先を、ちろりと突き出して、先端の裏筋をなぞる。ほんの一瞬、熱い感触が触れては離れる。舌と指とで、異なる温度と圧が交互に襲いかかる。
そして――突然、わずかに動きが速くなる。今まで焦らし続けていた掌が、ほんの少しだけ本気になる。ぬめるようなリズムで、しゅる、しゅる……と、敏感な部分だけを繊細に、けれど確実に追い詰めるように扱く。
翔子の吐息が、すぐ目の前でこぼれる。
「もう我慢しないで。……ね? いっぱい気持ちよくなって」
その声音には、包み込むような甘さと、完全に主導権を握っている自信がにじんでいる。
そして、彼女はゆっくりと顔を正面に構え、視線を伏せ、口元をやや緩める。
「……ここに、出してくれる?」
その囁きと同時に、翔子の手の動きが変わった。
それまでの繊細な焦らしが一転、手のひら全体で包み込むようにして、滑らかなストロークが一気に加速する。ぬめるような指先が幹をなぞり、根元から先端まで、一定のリズムで上下に扱く。
ぴちゃ、ぴちゃっ、と湿った音が空気を震わせるたび、彼の呼吸が荒くなるのが伝わってくる。
「……ほら、こんなに熱い……もう止まらないね」
翔子はその声を抑えめに、でもわざとらしく甘く震わせながら、親指でカリの裏筋を的確に擦り上げる。扱くたびに、先端から透明な雫がにじみ、翔子の指と彼自身を繋ぐ糸が伸びる。
彼の腰が、無意識に前へと突き出される。それを逃がさぬように、翔子の左手が下腹をそっと押さえ、逃げ場を奪う。
「……もうすぐ、でしょ?」
唇を噛み、翔子自身も息を弾ませながら、そのまま追い詰めるように速さを上げる。手首を柔らかく使い、指の腹と側面で交互に擦る。ひとつの頂点を目指して、ピッチがどんどん速く、強く、しかし決して乱暴にはならない。
「いって……いいよ」
翔子は顎を少し上げ、唇をすぼめて、目を薄く閉じる。その表情はまるで祈りのようで、けれど決して受け身ではない。すべてを「美しく、愛を込めて」受け止める覚悟が、そこにあった。
翔子は膝をついたまま、背筋をぴんと伸ばし、顔をわずかに上向ける。首筋がしなやかに伸び、白い喉元が、鼓動の波にかすかに揺れる。静かに吐息を整え、心と身体を同調させる。もう、いつでも受けられる。
びくっ――。
彼の腹筋が跳ね、翔子の前で熱いものがはじけた。白濁した飛沫が、彼女の左頬に、そして唇の端に飛び散る。頬骨に沿って、ねっとりとした一筋が滑り落ち、睫毛の先で震える雫が、最後にぽたりと顎先に滴った。
目を閉じたまま、翔子はその感触を受け入れた。嫌悪も、驚きもなく。ただ、包むように。
「……ふふ、いっぱい……出たね」
睫毛を震わせながら目を開けるその顔は、どこか誇らしげで、どこか恥じらっている。
翔子は目を閉じて、吐息を静かに整える。膝をついたまま、顔をほんのわずかに上向けて――
(……ちゃんと、受けられた)
翔子は顔をわずかに上げたまま、まだわずかに脈打っているペニスに、口元を寄せた。
「……少しだけ、ね」
その言葉とともに、翔子は唇を開いて、ぬめりの残る先端を咥え込む。一度、深く――そしてゆっくり引き抜く。
舌が内側からぬめった表面を感じ取り、かすかな塩気と、残った熱を舌の裏で受け止めた。
咥えたまま数秒、静かに、熱の余韻を舌に刻む。
やがてゆっくりと唇を離し、舌先で最後の雫をぬぐうように撫でる。
「……うん、もう大丈夫そう」
ティッシュを手に取り、唇と頬にかかった精液を丁寧に拭っていく。けれど、完全には拭ききらず、ほんの少しだけ残るように――それもまた、“見せるための余韻”。
「今日は……いかせるつもり、なかったのに」
ぽつりと漏らしたその言葉には、抑えきれなかった情と、どこか誇らしげな照れが混じっていた。
翔子は静かにカメラのレンズに目を合わせ、にこりと笑みを浮かべる。
「……見てた? ちゃんと、綺麗に受けたよ」
その声は、妻としての報告であり、愛される女のちいさな甘えでもあった。
撮影が終わったあと、ふたりの時間
撮影が終わったリビング。
まだ熱の残るソファに、秀斗が座っている。
その脚の間に、翔子が静かに膝をついていた。
スカートは脱ぎ捨てられ、Tバック一枚だけの姿。
形の整ったヒップが、柔らかな照明のもと、ゆっくりと揺れている。
「……さっきまで大地くんがいた、このソファの上だよ? ふふ」
そう囁く翔子の声は、どこか甘くて、ちょっとだけいたずら。
唇は、秀斗の先端をやさしく咥え込んだまま。
くちゅ……ちゅっ……
愛情のこもった舌の動きが、ゆっくりと根元まで届く。
「……あのとき……けっこう深くまで咥えてたよな」
秀斗の声が、わずかにかすれて漏れる。
「途中から、見てて……もう、びっくりした」
翔子は一度口を離し、息をゆっくりと吐いた。
唇の端に、うっすらと糸を引く透明なつや。
「うん……半分くらい、かな。あれ以上は、さすがに無理だった」
顔を上げて微笑むその表情には、誇りと照れと、ほんの少しだけ挑発が混じっていた。
「……あご、痛くなったりしてない?」
「ちょっと……だけ。でも、平気。……喜んでくれたでしょ?」
もう一度、翔子は唇を秀斗の先端へ戻し、今度はぴったりと密着させながら、
舌先でねっとりと裏筋をなぞった。
「正直……すっごい興奮した」
秀斗は息を荒げながら、翔子の揺れるヒップに視線を落とす。
Tバックに食い込んだ割れ目のライン。ひと揺れごとに、わずかに肌が震える。
「……俺もさ、あんなデカいの欲しいよ。もうちょっとでも……」
翔子はその言葉に、口を離してふっと笑う。
「ううん、今のままで充分。……だって、あなたのが一番、愛おしいもん」
その声には一切の誤魔化しがなかった。
そのまま、唇で軽くキスを落とし、再びゆっくりと咥える。
愛撫のテンポは一定で、急かさず、責めすぎず。
けれどそのひとつひとつに、“あなたのためにしている”という翔子の想いがこもっている。
「ふふ……こんなこと話しながら、こんなことしてるなんて……ほんと、変な夫婦だね」
「最高だよ、翔子……」
秀斗は、翔子の揺れるヒップを見つめながら、息を呑んだままぽつりと呟いた。
「……俺もさ、今日は……顔に、かけてもいい?」
翔子の動きが一瞬止まる。
口元を外し、見上げるその瞳には、確かに笑みが浮かんでいた。
「……どうしようかなぁ」
あくまで軽く。けれど、その言葉の裏には、じらす楽しみと、応える気持ちの両方が滲んでいる。
「そうやってすぐ真似したがるんだから……」
唇をゆっくりと舐めながら、翔子は顔を近づけ、再び先端にちゅっとキスを落とす。
秀斗は喉を鳴らしながら、膝の上に置いた手に力が入っていく。
「……だってさ……翔子が、あんなふうに受け止めてるの見て……俺、もう……」
言葉にならず、喉が詰まる。
「正直……大地相手にそんな顔してるの、見てて……すっごい興奮した。でも、嫉妬もしてる。もう、なんか……おかしくなりそう」
翔子はゆっくりと顔を戻し、唇だけで微笑んだ。
「ふふ……そっか。じゃあ、どうしよっか――」
そして、あえてはっきり答えずに、再び口を開き、秀斗の熱を咥え込んだ。
一度だけ、深く――
唇の奥で震える鼓動を感じながら、翔子の目が静かに細められる。
(……やっぱり、あなたのが一番、安心する)
そのまま、愛情を込めて、再び一定のリズムで愛撫を続けていく。
翔子の口の温もりの中で、秀斗は自分の欲と嫉妬と愛情に包まれながら、
少しずつ限界へと追い込まれていった――。
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